ヘッダー画像


Y.SHO

飛鳥車体株式会社 電装担当/
荘 勇二[しょう・ゆうじ]
  • Profile
    1969年生まれ。1992年日本工業大学電気電子工学科卒業。
    自動車部品メーカー市光工業㈱に入社。以来約30年にわたって自動車用ランプLED点灯回路、ミラー電動格納モータ制御回路の設計、量産対応などの業務に携わる。
    2021年、飛鳥車体に入社。電気系統の製造管理を担当。

自動車の急速な変化を追いかけた日々から、新しい未来への転身。

 前の会社では乗用車やトラックなどの車両メーカーに納める自動車部品の回路設計をやっていました。私が担当したのは乗用車/トラック用の格納式ミラーと、前照灯をはじめとするランプ類です。私がそこで過ごした30年はクルマが急速に変化した時代でした。ドアミラーは手動から電動に変わり、角度調整まで運転席からできるようになって、2000年以降はウインカー一体型や死角を映すカメラ付きなどさらに様々な機能が加わりました。前照灯もかつてはシンプルな円形がほとんどでしたが、次々と新しい形態が生まれ、光源もシールドビームから幾世代もの変遷を経て、現在のLEDに至りました。
 退職を考えたのは、会社が早期退職者を募ったことがきっかけです。さんざん悩みましたが、長年携わったドアミラーの仕事が自分の中でひと区切りついたこともあったし、これから定年までの約10年間、同じことを続ける気がしなかった。全く違う世界を見てみたくなったんです。

設計畑30年のキャリアを持つ私も、現場に立てばド新人。

 飛鳥車体での私の仕事は、お客さまのご要望に基づき営業担当者が作成した仕様書に従って、室内灯やアクセサリなど電気系統の配線を考え、協力会社の職人さんに的確な作業指示を行うことです。全てが仕様書通りに行くなら話は簡単ですが、いざ実作業に落とし込んでみると、浮上してくる問題が多々あります。従って私の役目としてはまず第一に営業担当や職人さんたちと密にやりとりをして、不明点を一つひとつクリアにすることから始めます。このステップを経ることで、初めて私はお客さまのご要望を100%把握し、職人さんに的確な作業をしてもらうことができるというわけです。
 この歳にして新人の私は、日々多様な案件を扱いながら、経験を積んでいる最中です。上司である課長は自ら配線作業ができるので、職人さんへの指示が私などよりも格段に的確で具体的です。これを見たら、自分でも作業できるようにした方が絶対にいいことは言うまでもなく、いま懸命に「修行」しています。
 でも、私はずっと机に座ってばかりだった前の会社の仕事とは180度ちがう、この会社での毎日が気に入っています。時おり完成間近の消防車からテストで鳴らすサイレンの音が聞こえてくるんですけど、これを聴く度に自分も消防車を作ってるんだという実感が湧いてきて、テンションが上がります。

量産vsカスタマイズでは仕事の仕方が正反対。

 前の会社ではメーカーの量産体制に応える製品作りでしたが、この会社では量産の対極にあるカスタマイズ生産を行っているので、仕事の仕方が「いちいち正反対」であったりします。前の会社は全て文書、文書であったのに対して、当社では「文書だけでは伝わらない」。それから板金とか、装備の職人さんは、豊富な知識・経験を持っているので、「現場がよく考える」。言ってみれば仕事上のコミュニケーションが前の会社では「Cool」、当社は「Hot」だと言うことですね。今は「Hot」なコミュニケーションが新鮮ですが、最終的にどちらがいいのかと考えると、簡単に答えは出ません。
 例えば弊社の場合、図面通りにいかないときは職人さんが技術で解決してしまいます。図面を一からやりなおさずにすみますから、実に合理的です。ですが、最終的な図面は残らないと、どうやって作ったかは職人さんの頭の中にしか残らない。これはこれで、長期的に考えるといいことばかりではありません。

コミュニケーションはHot+Coolの、Warmがいい。

 記録というものは、ノウハウや経験値を誰でも見える形に「可視化」した会社の資産なのです。また情報の伝達の部分でも、文書化しにくい「イメージ」とか「込み入った内容」については、FACE TO FACEが一番伝わるでしょうが、受発注などの取引に関することはきっちり文書を取り交わすことが必須です。
 この会社には、職人の持つ知識・経験をはじめとして、豊富な「属人的」ノウハウがあります。これをきちんと後世に継承していくためには「Hot + Cool=Warm」なコミュニケーションが必要なのではないか、といま思っています。
 私の「第二の人生」は始まったばかりです。初心に戻って色々と学ばせていただくと同時に、日々の業務を通して、前の会社での経験とこの会社の伝統的なスタイルをうまくミックスさせて、微力ながらではありますが、理想的な製作システム構築に向けて、努力していきたいと思っています。